精神科疾患について

うつ病のあまり知られていない症状や行動20選

うつ病は、かつては特別な病気と考えられていましたが、今では誰でもなる可能性がある病気として認識されています。世界保健機関(WHO)では、うつ病を含む精神疾患が世界中で大きな問題となっており、現在では全世界で3億5000万人以上の人々がうつ病を抱えていると言われています。私たちもうつ病に対して正しい知識を持ち、注意を払う必要があります。

うつ病は、ストレスや過労が引き金となり、生きるエネルギーが失われた状態です。単なる「怠け」や「疲れ」とは違い、十分な休息を取っても改善されず、仕事や学業に支障をきたすことがあります。代表的な症状として、気分の落ち込み、楽しみを感じられなくなる、気力の低下、睡眠や食欲の異常などが挙げられます。

しかし、うつ病は非常に多彩な症状を伴う病気です。脳の機能が低下することで、自律神経を介して全身に影響を与え、身体的な症状も現れます。ここでは、あまり知られていないうつ病の症状や行動を16個にまとめました。ぜひ参考にしてください。


1. 身体の痛み

うつ病の患者には、身体の痛みを感じることが多くあります。例えば、慢性的な腰痛で整形外科を受診しても、原因がわからず、痛み止めも効果がない場合があります。実は、うつ病が原因で身体に痛みを感じることがあり、うつ病が治ると共に痛みが消えるケースもあります。

痛みは、頭、顔、首、肩、背中、手足、陰部など、全身に現れることがあります。しかし、レントゲンや血液検査では異常が見つからないため、医師から「気のせい」と言われることが少なくありません。この痛みは脳の「扁桃体」という部分が過敏になっているために起こります。本来の痛みの強さよりも何倍も強く感じてしまうのです。


2. 当たり前のことができない

日常的なことができなくなるのも、うつ病の症状の一つです。例えば、シャワーを浴びる、歯を磨く、洗濯をするなど、当たり前のことが面倒に感じるようになります。特に、髪を洗って乾かすことを億劫に感じることが多く、「入浴しなくてもいいや」と思ってしまいます。気づいたら1週間に1回しかお風呂に入っていない、ということもあります。


3. 無表情になる

「話しをしていても表情がほとんど動かない」という状況です。

<無表情の原因>

まず考えられるのが「抑うつ気分」です。気分が沈んでしまい、感情を表に出すことが難しくなり、表情が乏しくなってしまうことがあります。

次に、「活力の低下」です。動く気力がなくなり、顔の筋肉を動かすことさえ億劫に感じるため、表情を作れなくなってしまいます。そして「不眠」も一因です。眠れない日々が続くと、体が疲れ切ってしまい、表情にまで気を配る余裕がなくなるのです。

<無表情に似た変化>

人によっては「笑わなくなる」という症状が見られることがあります。また、無意識に「口角が下がる」こともあり、顔全体が沈んだ印象になります。さらに、「疲れ切った表情」をしてしまうこともあり、全身の疲労が顔に現れることもあります。


4.目がうつろになる

「目に活力が感じられない状態」が見られます。

<目がうつろになる原因>

最初に挙げられるのが「抑うつ気分」です。気分が落ち込んでいると、自然に目に輝きがなくなり、うつろな目つきになってしまうことがあります。次に、「考えごと」にとらわれすぎて、目がぼんやりとしてしまうこともあります。また、「集中力の低下」により、目線にも力が入らなくなり、目がうつろに見えることがあります。

<似ている症状>

「目が合わない」ということもよく見られます。伏し目がちになり、人と目を合わせるのを避けることがあります。さらに、「目の下にクマができる」こともあり、疲労やストレスが目元に現れることがあります。また、「あらぬ方向を見る」ということもあり、考えごとに夢中になり、視線が定まらない状態が見られることもあります。


5. 孤独を感じる

周りに人がいても、孤独感に苛まれることがあります。みんなが楽しそうにしているのに、自分だけが取り残されているように感じたり、何を言われても心が通じていないと感じることがあります。このような孤独感は、うつ病の一部であり、絶望感に繋がることもあります。


6. 掃除ができない、部屋が汚い

うつ病の影響で、掃除をする気力が湧かなくなり、部屋がどんどん汚れていくことがあります。掃除を「明日やればいいや」と先延ばしにし続け、気づいたら部屋がゴミだらけになっていることもあります。どこから片付けを始めれば良いのかわからず、行動に移せなくなってしまうのです。これを「怠け」と感じるかもしれませんが、うつ病の症状の一つです。


7. 離人感

離人感は、孤独感に似ていますが、外の世界と自分が隔離されているような感覚です。外の世界をモニター越しで見ているような感覚や、自分が透明な膜で包まれているように感じることがあります。自分が現実から切り離されているような気持ちになり、周囲とのつながりが感じられなくなります。


8. 誰にも会いたくない

うつ病になると、孤独を感じていながらも、誰かに会うことが苦痛になります。人に気を遣うことができなくなり、他人と話すこと自体がエネルギーを消耗させるため、避けるようになります。歯医者や美容院など、日常的な外出もできなくなり、電話やインターホンに出ることすら困難になることがあります。


9. 物忘れがひどくなる

うつ病になると、脳の機能が低下するため、物忘れがひどくなります。例えば、友人や家族の名前が思い出せない、大事な物をどこに置いたか忘れるなどの症状が現れます。これは認知症と混同されることがありますが、うつ病による物忘れは、忘れたことを後で思い出すことができる点が異なります。


10. イライラして怒りっぽくなる

うつ病というと、落ち込んで静かになるイメージがあるかもしれませんが、イライラして怒りっぽくなることもあります。感情のコントロールができなくなり、些細なことでカーッと怒ってしまうことがあります。以前は穏やかだった人が突然怒りやすくなった場合、うつ病の可能性があります。


11. 焦りでキャリアアップを考える

うつ病の症状として、焦りの感情が強くなることがあります。自分に対する評価が低く感じられ、「このままではいけない」と焦り、資格を取ろうとしたり、転職を考えたりすることがあります。しかし、うつ病の状態では集中力が続かず、結果的に失敗してしまうことが多く、さらに自己否定が強くなってしまいます。


12. 音楽が聴けなくなる

今まで好きだった音楽がうるさく感じられるようになることがあります。うつ病になると、音楽を聴いても楽しさを感じられず、集中力が低下するため、音楽のリズムやメロディーをうまく感じ取れなくなるのです。これにより、以前はリラックスのために音楽を聴いていたのに、音楽そのものを避けるようになります。


13. 映画やテレビが見られなくなる

うつ病になると、映画やドラマのようにストーリーを追わなければならないものを観るのが難しくなります。集中力が持続せず、ストーリーを追いかけることが疲れてしまい、途中でやめてしまうことが多くなります。また、物事に対する興味自体が薄れているため、楽しんで観ることができなくなるのです。


14. テレビをつけていないと不安

映画やドラマは集中して見られないのに、一人でいると不安を感じ、テレビをつけていないと落ち着かないということがあります。テレビの音や映像が、孤独や不安感を紛らわせるため、常にテレビがついている状態にしてしまうことがよくあります。


15. 眠りたくない・眠るのが不安

夜になると、翌日を迎えるのが不安になり、眠ることを避けようとすることがあります。眠ったらまた明日が来てしまうという恐怖感から、なかなか寝床に入れず、深夜まで起き続けてしまうのです。睡眠不足が続くと、さらに体調が悪化し、負のスパイラルに陥ってしまいます。


16. お酒の量が増える

辛い気持ちを和らげるために、アルコールに頼ることが多くなります。眠れない夜にお酒を飲んで一時的に気分を紛らわせようとする人もいますが、これは逆効果です。多量の飲酒は、うつ病を悪化させる原因となり、アルコール依存症に繋がる可能性もあります。お酒で感情を麻痺させようとすると、さらに状況が悪化してしまうのです。


17. 気候の変化に敏感になる

うつ病の患者は、気候の変化に非常に敏感です。特に雨の日は、気分がさらに落ち込み、外に出ることができなくなります。天気によって行動が制限されるため、毎日の天気予報が気になるようになります。以前は気にしていなかった天候が、日常生活に大きな影響を与えるようになるのです。


18. すぐに喉が渇く、飲み水がないと不安

うつ病による自律神経の乱れから、常に喉が渇いていると感じることがあります。不安感が強くなると、水を飲むことで心が落ち着くため、常に水を飲んでいることが多くなります。外出時や寝るときなど、手元に飲み物がないと落ち着かないという症状も、うつ病の特徴の一つです。


19.緊張・こわばり

「余裕がなく、張りつめているように見える状態」のことです。

<緊張・こわばりの背景>

まず挙げられるのが、「不安や緊張感が強くなること」です。交感神経が優位になり、体全体がこわばることがあります。また、これに関連して「イライラ感」が頻繁に出る場合もあります。さらに、「考えごとにとらわれることで、心に余裕がなくなり、体が緊張する」ことも原因となります。

<似ている症状>

典型的なものとして「眉間にシワが寄る」ことがあります。これは、緊張状態に伴う自然な反応です。また、「目を見開く」ことが緊張の表れとして現れることもあります。さらに、「口をきつく閉じる」人もいます。これは緊張感や不安感が強まるときによく見られる反応です。


20.声が小さくなる

表情とは少し異なりますが、「声が小さく、聞き取りにくくなる」というのも特徴的な変化です。

<声が小さくなる背景>

まず、「抑うつ気分」が関係しています。気分が落ち込み、全体的に活動が鈍くなることで、声も自然に小さくなることがあります。次に、「精神運動抑制」という状態です。動きが少なくなり、その影響で声も小さくなってしまうことがあります。そして、「意欲の低下」も声の変化に関与しています。やる気が減退することで、声を出すことさえ億劫に感じるのです。

<似ている症状>

「話すテンポが遅くなり、ゆっくりとした話し方」になることがよく見られます。また、「話が途中で途切れる」こともあり、集中力の低下や意欲の喪失が影響しています。さらに、「声のトーンが以前よりも低くなる」こともあります。これも気分の落ち込みが反映された変化の一つです。

うつ病のあまり知られていない症状のまとめ

うつ病は気分の問題ではなく、脳の機能が低下することで引き起こされる病気です。今回紹介した16の症状や行動は、うつ病の症状の一部であり、日常生活のさまざまな場面に影響を与えることがあります。うつ病は早期発見、早期治療が大切です。もしも今回紹介した症状のいくつかに心当たりがある場合は、早めに精神科を受診し、適切な治療を受けることをお勧めします。うつ病は適切なケアを受ければ、回復が可能な病気ですので、一人で悩まず、サポートを求める勇気を持ちましょう。

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